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のが淚やまだら竹』といふやうに、それ自身に情󠄃趣の深い色つぽさがある。しかし「いき」の表現としての竹材の使󠄃用は、主として木材との二元的對立に意味をもつてゐる。なほ竹のほかには杉皮も二元的對立の一方の項を成すものとして「いき」な建󠄄築が好んで用ひる。『直な柱も杉皮附、つくろはねどもおのづから、土地に合ひたる洒落造󠄃り』とは「春色辰巳園」卷頭の敍述󠄃である。

 室內の區劃の上に現はるる二元性としては、先づ天井と牀との對立が兩者󠄃の材料上の相違󠄄によつて强調される。天井に丸竹を並べたり、ひしぎ竹を列ねたりするいはゆる竹天井の主要󠄃なる任務は、この種の材料によつて天井と牀との二元性を判󠄄明させることにある。天井を黑褐󠄃色の杉皮で張るのも、靑疊との對