Page:Iki-no-Kozo.djvu/129

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比關係に關心を置いてゐる。また、天井そのものも二元性を表はさうとすることが多い。例へば不均等に二分󠄃して、大なる部分󠄃を棹椽天井となし、小なる部分󠄃を網代天井とする。或ひは更に二元性を强調して、一部分󠄃には平󠄃天井を用ひ、他の部分󠄃には懸込󠄃天井を用ひる。次󠄄に牀自身も二元性を表はさうとする。床の間と疊とは二元的對立を明示してゐなければならない。それ故に床框の內部に疊または薄󠄄緣を敷くことは「いき」ではない。室全󠄃體の疊敷に對して床の間の二元性が對立の力を減ずるからである。床の間は床板を張つて室內の他部と判󠄄明に對立することを要󠄃する、卽ち床の間が「いき」の條件を充すためには本床であつてはならない。蹴込󠄃床または敷込󠄃床を擇ぶべきである。ま