〈義經の木像を祠りありし所なり〉等と其趣を異にせり、世間傳ふる所多くは沙流郡の通語にして、未だ此の諸國の語(之を總稱して十勝語といふ)に通ずる者多からず、予や甞て偶ま十勝國に遊び土人と交ること久し、故に今一寸覺へて置かされば不都合じやと思ふ者のみを撰で、心を北海道に寄する人々の手引草の一助に供すと云爾
因云 土人とは徃昔所謂蝦夷人をいふ、今尙土人と唱へて、移住民と區別するものは、人情、風俗、及ひ言語の異なるあるを以てなり、今其近况を槪言ば、逐年開進に趣くの狀ありと雖ども、性質頑愚、常に野獸を捕へ魚介を漁するを好み、粗衣惡食是れ足れりとし、口邊に文し、耳端に環し、蓬髮、徒跣の風俗は今尙存して改めずといふ
天地
リッダ(天又ハ高) ラム(地又ハ低) シクシカモイ(日)〈カモイとは神の義にして尊敬せるものには多く之を附用す〉 ツップカモイ(月) ノチウ(星) ケモロス(山) べツ(川) アドヒ(海) ノプカ(原野) ノプリ(峯) ショマ(石) コユップケ(荒浪) ルウ(道) パエー(登) サン(降) シンブイ(穴) シリボッケ(暖氣) メアン(寒氣) ルヤンベ(雨) レラ(風) ユプケ(吹)