Page:Hōbun Nihon Gaishi.pdf/90

提供:Wikisource
このページは校正済みです
らん」と。已にして淸盛、數千騎を以て京師に入る。基房入りて泣きて法皇に訴へて曰く、「淸盛來り怨を臣に修めんと欲すと聞く。果して竄流せられん。復左右に奉ずること能はざらん」と。法皇曰く、「朕と雖も亦自ら保んずる能はざるなり」と。明日、法印靜憲じやうけんをして、往きて淸盛をさとさしめ、且其意を問はしむ。淸盛見ず。昏に及ぶまで答ふる所なし。靜憲去らんと請ふ。淸盛、子の知盛をして出でて答へしめて曰く、「臣おいたり。復た君に事ふる能はず。此の如き耳」と。靜憲わしり出で、颺言して曰く、「賢相の明德なる、天に跼まり地に蹐す」と。淸盛之を聞き