コンテンツにスキップ

Page:Hōbun Nihon Gaishi.pdf/1571

提供:Wikisource
このページは校正済みです

驚き、行を戒む。二月朔、駿府に至り、日夜看護して、衣帶を解かず。諸︀侯伯 相踵ぎて來りうかゞふ。前將軍、自起たざるを知り、醫藥をしりぞけて用ゐず。三月、天 皇、廷臣二人をして、就きて前將軍を拜して太政大臣太政大臣と爲す。二十七日、前將軍 疾をつとめ、衣冠して命を拜す。尋いで將軍をして天使を饗せしむ。四月、前將軍 やまひあつし、乃婦女をまねきて入侍するを許さず。十四日、諸︀侯伯を召し、諭して曰く 「吾れ老いて病めり。家康遺言旦夕將に地に入らんとす。吾れ旣に天下を平定す。將軍、大政 を執ること日あり。吾れ復後事を以て憂と爲さず。然りと雖、吾れ死して將軍或 は政を失はヾ、則侯伯の其器︀に當る者︀、宜しく代りて天下の柄を執るべし。天下 は一人の天下に非ず。吾れ何ぞうらみんや」と。乃遺物を分賜し、めて國に就き 以て後命をたしむ。初め諸︀侯各はくる、不諱ふきあらば、まさに拘留せらるゝこと累年 なるべしと。是に於て、皆意外に出づ。旣にして將軍を召して曰く、「吾れ諸︀侯に 諭して曰く、『將軍政を失はヾ、善者︀之を取れ』と。汝、其政治を愼み、毫も私曲 ある勿れ。而れども天下若し命にさかふ者︀あらば、親戚勤舊と雖、宜しく速に誅伐 を加ふべし」と。將軍歔欷きよきして退く。三家義直、賴宣、賴房を召し、誡むるに善く將 軍に事ふるを以てす。其成瀨正成、安藤直次、中山信吉を召し、つとむるに輔導ほだう