二人を殪す。一人、銃を以て之に迫り、射て其腹を洞す。忠朝眺りて馬より下
り、刀を拔きて銃者︀を斬る。其圍、鐵檛を進む。乃左に檛を奮ひ、右に刀を揮
ひて、八人を殪す。身も亦二十餘創を被り、溝を踰えて僵る。敵、其首を爭ふ。
忠朝、秀政戰死從騎大屋某、尸上に伏し、敵を扞ぎて死す。秀政も亦、躬自力戰して、終に之に
死す。其長子忠修、攢槍の下に死す。少子忠眞、創を被りて死せんと欲す。其臣
澁多見某、安積某、扶けて還る。右先鋒の隊將伴八彌、安見右近等、進みて治房
の軍を衝く。書院番の三隊、繼ぎて進む。迭に勝敗あり。本多、遠藤の諸︀將、
橫さまに之を擊つ。治房敗走治房敗走し、返りて稻荷に戰ひ、又敗る。纔に脫れて城に
入る。
右軍已に前み、左軍稍郤く。直孝、高虎、願て左軍を助く。酒井、榊原の諸︀將、
安藤直次方に敗を承けて進み戰ふ。未だ决せず。直孝、高虎、橫さまに森氏の軍後を斷ち
て之を破り、七隊長と遇ふ。利あらず。安藤直次、前將軍の令を以て至り、衆を
督して返り撃ちて之を破る。勝成、所部を率ゐ、命を奉じて住吉に赴く。左軍の
戰作るを望み、轉じて天王寺に向ふ。行敵兵を破り、而して川塲に趨き、明石守
重と遇ふ。交綏きて北ぐ。大番の三隊、將軍の令を以て、守重を勝曼に邀へ擊