Page:Gunshoruiju27.djvu/371

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みじうあつきに。おきふしいつしか夕すゞみにもならなんと思ふほどに。やうくれがたになりて。ひぐらしのはなやかになきいでつる聲きゝつるこそ物よりことにあはれにうれしけれ。しのびたる人のかよふには。夏の夜こそおかしけれ。いみじうみじかく。つゆもまどろまぬほどにあけぬるよ。やがてよろづのところもあけながらあれば。すゞしげにみわたされたるかほ。いますこしいふべきことどもはのこりたる心地すれば。ふともえたちさらで。かたみになにくれといひかはすほどに。たゞこのゐたるうへにからすのたかうなきてゆくこそけせうなる心地しておかしけれ。まづたかきひむがしみなみなどのかうしあけとをしたれば。すゞしげにみゆるよ。もやに四尺の木丁たてたるまへにわらうだうちをきて。三十許なるそうのいときよげなるうす物のころもげさなどいとあざやかにさうぞきて。かうぞめのあふぎうちつかひつゝ。だらによみゐたるこそ物きよげにみゆれ。もののけにいたくなやむ人にやうつすべき人とておほきやかなるわらはのすゞしのひとへあざやかなるはかまながやかにきなしてゐざりいでて。こなたざまにたてたる木丁のつらにゐたれば。とざまにひねむきて。いときはやかなるとこをとらせて。ずゝをしもみうちおがみなどしてよむだらにいとたうとし。けそうの女ばうどもいとおほくそひゐて。つとまもらへたるに。ひさしくもあらでふるひいでぬれば。もとの心はうせて。をこなふにしたがひててうぜらるゝさま。佛の御心ばへを見るにもいとたうとし。せうといとこなどやうなる。いりたちの人々もあまたあり。又げらういりたちのほうざなどもありて。うしろにゐて