Page:Gunshoruiju27.djvu/370

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がみのほそやかなるに。はなかくれなゐか。すこしうつろひたるも。木丁のもとにちりぼひたりけり。女は人氣のすれば。きぬのなかよりほのみあげたるに。うちえみて見あはせて。やがてなげしにをしかゝりてゐぬ。わざとはぢなどはせねど。又まことにうちくべき心にはあらぬ人にや。ねたくもみえぬるかなと思ふべし。こよなき御なごりのあさゐかな。たれをふしみのとて。すのうちになからはいりたれば。露よりさきにおきける人のもどかしければといらふるも。わざととりたてゝおかしき事とて。かくべきことにはあらねど。たゞかくいひかはすほどの氣色どものにくからぬなめり。まくらがみなるあふぎををよびて。わがもたるぬりぼねあかきかみはりたるしてかきよするほどあまりちかくよりくる心ちして。心ときめきせられて。いますこしひきぞいらるゝ。とりてみなどして。こよなうごとくおぼしたる事などうらみつゝ。うちかすむることどももあるべし。たゞしばしと思ひつるほどに。やうあかうなりて人の聲もするは。日たかうなるなるべし。きりのたえまみえぬほどにといそぎつるふみも。たゆみぬめるこそなをとこの心はうしろめたなけれ。いでぬる人もいつしかと思がほに。はぎのつゆながらをしおりてつけたるふみあめれど。かくてある程はえさしいでず。丁子ぞめのうつしのはなやかににほひたるほどなどいとおかし。あまりはしたなきほどになりぬれば。たちいづるにもおかしきありさまは。みすてがたきぞにくきや。わがをきつるところもかくてやなど思ひやるもおかしかりぬべし。女もひとしれず思ひいづることもありけむかし。七月十よ日ばかりのひざかりのい