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Page:Gunshoruiju27.djvu/354

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て。やをらまろびよりて。きぬをひききるほどこそむとくなれ。人はたけくおぼゆらむかし。そらねしてしらぬがほなるさまよ。

はしたなき物。こと人をよぶにわれがとてさしいでたる。まして物など御らんずるおりは。をのづから人のうへなどうちいひそしりなどもしたるに。おさなきこどものきゝとりて。この人のあるまへにあぶなくいひいでたる。あはれなる事など人のいひてうちなくに。げにあはれとはいひながら。淚のいでこぬいとはしたなし。まめだちてなきがほつくりて。氣色ことになせど。いでこぬなみだをばいかゞはせむとする。さるはさやうなるにも。きくかひありてうちあへしらふ人こそものゝあはれしりたる心ばへとはみゆれ。またさしも人めにみえじとつゝむ事に。思ひもあへずたゞいできにいでくるもはしたなしかし。

あはれなる物。おやのためにけうある人のこ。わかきおとこのみたけさうじする。さだまりたる人ぐしたるも。又さらでうちしのびたるおもふひとあるも。あはぬよなへだつるは。くるしき物にこそ思ふべかめるを。ことのほかにきびしうへだてなして。ひとりいでゐてうちをこなひたる。あか月のぬかのほどなむいみじうあはれなる歟。むつましき人のめさましてきくらむ心地。いかならんど思ひやらる。はてぬる後もみちのほどいかにおぼつかなくつゝしみ思ひたるこそめでたけれ。おとこも女もわかうかたちよき人のふぐなるこそあはれなれ。十月ばかりにきりきりすの聲きゝつけたるいとあはれなり。にはとりのかいこいだきてふしたるいとあはれなり。日ひとひ。むしやなにやとひまなくくいありく。心に念じてあらんよ。秋ふかき