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うへのきぬも下がさねもひとつになりたる。いかにわびしからんとみえたり。夏はされどよろし。

あつげなる物。すいしのおさのかり衣。のふのけさ。いでゐ出居の少將。いろくろき人のいとうこへてかみおほかる。きんのふくろ。六七月のすほうのあざりの日中時などをこなふ。いかにあつからむと思ひやる。又おなじころのあかゞねのかぢ。

つれなぐさむ物。みどころある物がたりのおほかる。ごすぐろく。三四ばかりなるちごの物いひおかしき。又むげにおさなきが物がたりしゑみなどするもなぐさむ。くだものとりちらしたる。おとこのうちさるがひ物がたりしたる。

つねよりことにきこゆる物。殿上のくるまのをと。春のにはとりの聲。あかつきのしはぶき。もののねさらなり。めでたき物の人のなにつきていふかひなくきこゆる。むめ。やなぎ。さくら。かすみ。あふひ。かつら。さうぶ。きり。まゆみ。かえで。こはぎ。ゆき。まつ。

ゑにかきてをとる物,なでしこ。さくら。物がたりにかたちよしといひたるおとこ女のかたち。

ゑまさりする物。松の木。秋のの。山ざと。山みち。やなぎ。らん。

おなじことなれど。きく耳ことなる物。ほうしのこと葉。おとこのこと葉。よき人のこと葉。げすのことばは。みなもじあまりたらぬこそあやしけれ。

ありがたき物。しうとにおもはるゝむこ。しうとめに思はるゝよめ。かねのけぬきの物よくぬくる。しうそしらぬずんざ。かたちよく心よく。おほかたかたわなく。よろづぐしたる人。おなじ所にすむ人のかた身にはぢかはして。いみじうよけいしたりと思ふ。