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をつくり僧を供養する事も。無欲淸淨の心よりおこらず。民をなやまし人をむさぼらば。たゞ名聞利養の佛事にして無上菩提の善根とは成べからず。長者の万燈よりも貧女がイ一燈はまされるといふたとへあり。聖武四十五代天皇の天平十三年に諸國に護國國分の二寺をたてられて。僧尼を安置し。金光明法花等の經をかき供養して。當國の百姓のため四時をとゝのへ。百穀の豐饒をいのり給へり。諸國の守護たらん人。かゝる所を再興せむは。昔の檀那の心にもかなひ。今のついえもさのみ有べからず。あたらしき寺をたてんよりは。古きを修造せむはその功德猶まされるよし像法决疑經にもとかれ侍るにや。さて出家のともがらもわが宗をひろめむと思ふ心ざしは有べけれど。無智愚癡の男女をすゝめ入て。はては徒黨をむすび。邪法ををこなひ。民業をさまたげ。濫妨をいたす事は。佛法の惡魔。王法の怨敵也。これらのともがらをばいかにもいましめらるべきこと。武道の專一也。一遍聖のやうなるたぐひは。一旦歸依渴仰すといへども。世のわづらひとはならず。それもいたるなることは佛法の正理にあらざるべし。昔の大師先德は求法のため風波の難をかへりみず。もろこし船のともづなをとき經論聖敎をわたしてもさらに是を私せず。ことく朝庭に奉れるを。御覽じイて則返し給はり。世にひろむべきよしの勅諚をうけて。わづかに得分とては。度者の二人三人を申うけしイばかり也。度者といふは今の世のやうに思ふさまに出家する事はかなはず。公方のゆるされをかうぶりて。髮をそり衣をそめしかば。我宗をも相承せしめ。又年よりて杖ともせむがため。これを申うけし也。每年人