Page:Gunshoruiju27.djvu/202

提供:Wikisource
このページは校正済みです
あるひは稱名安心にひまをえざるといひて。やゝもすれば向上のまんをおこし。又本願ぼこりをなす事は大なるあやまり也。昔梁の武帝は佛法にかたぶけるあまり。大同寺に行幸ありてみづから經を講じ給しかば。其世の群臣も君の心ざしをうけて。苦空無常の觀をなしゝかば。天より花ふりさまの奇瑞なども有しかど。文武の道をすて侍しゆへに。侯景といふ臣ひまをうかゞひ。兵をおこし都をかこみしかば。武帝はのがるゝはかりごとをうしなひ。つゐにやまひを感じて崩じ給へり。唐の大宗はかゝる前蹤をかゞみ給ひて。たとひ佛法をこのむとも。先國をしづめ民をやすんじてのこと也とて。もはら政道をさきとせられしかば。貞觀のまつりごとといひて。目出たきためしに申つたへ。唐の世は三百年にをよびて天下をたもち侍り。それ大悲の菩薩は衆生にかはりて苦をうけんとせいぐはんをおこし給へり。天下主領たる人。誠に不足もなき身において。政道をとりもちこれををこなはんことは。大にむづかしきことなれど。たれにゆづるべきことにもあらざれば。つとにおき夜半にいねて万民のうたへをきゝ。理非をけつし。其のぞみをかなふることは。地藏觀音の慈悲の誓願も。唐堯虞舜の仁德の政道も。さらに別に有べからず。是を佛法王法二なく。內典外典一致也といへり。唐の李舟が書にいはく。釋迦中國に生れなば敎を設ること周孔のごとくならん。同孔四方にむまれなば敎をまうくること釋迦の如くならん。天堂なくは則やんぬ。あらば則君子のぼらん。地獄なくは則やんぬ。あらば則小人入らんといへり。是は內典外典を和會して至極のことはりをのべたる物なるべし。又寺