Page:Gunshoruiju27.djvu/163

提供:Wikisource
このページは校正済みです

もく候べし。御罪にも成まじく候也。全仰忝候へば。かやうに所存の趣重て申候也。故大將殿は文覺をばひた口の强きものとおぼしめして候し也。殿には別て奉公も候はぬに。是ほどまで申候事恐存候。御許候へ。殿は若より樂たうとくて。人の歎民のくるしびもイしらでやましまさんと淺ましく痛しく思ひまいらせ候間。いづくへなりとも。まれに流しまいらせて。暫わびしき目をみせ參らせ給へ。それぞいとをしく思給。至極後の御藥イにて候べきと故大將殿には內々申て候し也。京中の者申合候なるは。いたく狩を好て人の歎をしらせ不給。世の費をもかへりみさせ給はぬ。すべていさむる事をきゝ入させ給はず。彌御前あしくなる故に。人皆口をとぢて。只目出度おはしますとのみ申をききて。すべて御身のとがをば一つもきかせ給はず。しらせ給はぬとさゝやきて。謗申げに候也。若左樣におはしまさば。いかでかおやの御跡を續て。帝王を守まいらせ。國土の固とはならせ給べき。それを押直させ給ての上の御祈にて可有候。夫をなをさせおはしまさずば。いかに祈まいらせ候とも。しるし有がたく候。まして文覺などはかなふまじく候。あるまゝのことを心にまかせて申候へば。一定うとまれまいらすべく候。それくやしく思まじく候。能てもよくおはしませとてこそ申事にて候へ。物知たる人々の本文を引て申を承れば。爲君爲世よき事を只一言に申出したるは。千兩の金をまいらせたるにははるかにまさり候と。明王は定をかせ給ひて候なるに。げにも殿の御身には。金をば何にかせさせ給ふべき。君に黃金をまいらせさせ給はんよりは。國土をしづめて米榖を多くなし。民をゆたかに成て進ぜさせ可