Page:Gunshoruiju27.djvu/162

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をついやさず。人をくるしめ侘しめず。國土をたのしく安じて。寒暑時をあやまたず。飢疫の禍なく兵亂なく。浪風もたゝず。世間を靜になさんと營給を。心正きとは申候也。返々も殿の御身は。武士の德を一も不洩双備と勵せ給へ。扨君の御敵と成ものは。謀反人にもあらず。無道に人をわびしむる怨人にもあらず。させる罪なからん者をば。搆てほろぼさじと思食。いたく狩漁をこのみたのしみて。そぞろに物の命を殺事をなさせ給そ。物をころさず物の命を扶を能將軍とは申候也。然をイ我身をさまらずして。天下の人によき人とも思はれさせ給はねイは。山だち。海賊。强盜。竊盜多くして。終には國のほろび候也。制禁頻に下。御下知しげく成候へども。彌仰こそかろく成候へ。一人を斬せ給共惡黨十人に可成候。いよいよこそあしく候はんずれ。是をば我御身の科とはつや思召して。惡黨の科とのみ思召て。捕よ。搦よ。うて。はれ。召籠よ。籠囹圄に入よ。くびを切。手足を斷などと被仰候はんも心うく候べし。扨後生の罪をば如何せさせ給べき。全人のする科にてはなし。只我身のをさまらぬ科とふかく思召。武家の政道は。いかさまにも物を知て候し人に問し時。よに安しとて只一口に答へ候しは。的を射に似たりと申候也。是を御心得候へ。是は目出度本文にて候。さて御身だに治候ぬれば。兎あれ角あれとの御いましめもなく。御下知もなく。御敎書も候はねども。あらイおそろしとて。自然に國土はをだしく候也。かく目出度時に當て。古今の間に惡黨なきにはあらず。身ををさめ世をすくはせ給てのうへに。わろからんえせものをうしなはせ給候はむ事は。菩薩の大行にて侯べし。世も靜り候べし。御敎書もお