Page:Gunshoruiju27.djvu/154

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り添て返さるべしと法を定られて。面々の狀を召をかれけり。只賦給はゞ。所の奉行も紛をかして。誑句も有ぬべければ。紛かさじために。かしこかりし沙汰也。さて世立なをりて面々返納すれば。本所領なども有て便有人のをば。本物計をさめさせて。本主には約束の儘に。我方より利分をそへて。慥に返しつかはされけり。無緣の聞有者のをば皆ゆるし給て。我領內の米にてぞ本主へはかへしたびける。左樣の年は。家中に每事儉約を行て。疊を初として。一切のかへ物どもをも古物を用。衣裳の類もあたらしきをば着せず。ゑぼしの破たるだにも。古きをばつくろひつがせてぞき給ける。夜の燈なく。晝の一食をとゞめ。酒宴遊覽の儀なくして。此費を補ひ給けり。心ある者の見聞たぐひ。淚をおとさずと云事なし。然るに大守逝去の後。漸父母にそむき。兄弟を失はんとする訴論多成て。人倫の孝行日々に添てをとろへ。年に隨て廢たり。實上人の御敎のごとく。一人正しければ。万人隨へる事分明也けるとぞ申侍イし。

泰時朝臣。此山中に入來。法談の次に上人問奉て云。古賢云。人多則勝天。天定破云々。然に只武威を以國をかたぶけ給といふとも。其德なくば果して禍來らん事久しからじ。賢聖の詞不疑。自古和漢兩國に以カ天下を取たぐひ。更に長く持者なし。忝も我朝は。神の代より至今九十代に及て。世々受繼て皇祚他をまじへず。百王守護の三十番神。末代と云ともあらたなる聞有。一朝の万物は。悉國王の物にあらずと云事なし。然ば國主として是をとられむを。是非に付て物惜まんイなし。縱無理に命を奪といふとも。天下にはらまるゝたぐひ。義を存ぜんもの。豈いなむ事あらんや。