Page:Gunshoruiju27.djvu/152

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すく治るベし。天下の人の欲心深訴來らば。我欲心のなをらぬゆへぞと知て。我方に心をかへして。我身を耻しめ給べし。彼を咎に行給ベからず。縱ば我身のゆがみたる影の水にうつりたるをみて。我身をば正しくなさずして。影のゆがみたるを嗔て。影を咎に行はんとせむがごとし。心ある人のそばにて見てをこがましく思事也。傳聞。周文王の時一國の民くろをゆづりしも。たゞ文王一人の德國土に及し故に。万人皆かゝるやさしき心になりし也。くろをゆづると云は。我田の堺をば人のかたへ多くさりゆづりて。我方の地をば少くせし也。たがひにかやうにゆづりあひて。我田地を人のかたへやらんとはせしかども。かりにも人の分をかすめ取事はなかりき。他國より訴訟のため都へのぼる人。此周の國をとほるとて。この有樣を道の畔にて見て。我欲のふかき事を耻。路より歸にけり。此文王我國を治のみならず。他國まで德を及玉ひしも。只一人の無欲に依て也。剩此德充て天下を一統にして。八百の祚を持き。されば大守一人の小欲に成給はゞ。一天下の人皆かゝるべしと云々。此敎訓を承しに。心肝に銘じて深く大願を發し。心中に誓て此趣を守き。隨て義時朝臣逝去の時。頓死にてありしかば。讓狀の沙汰にも及ばざりし程に。二位家の命にて。泰時嫡子たる上は。分限少くてはいかにとしてか天下の御後見をもすべきなれば。皆を官領して。舍弟共には分に隨て少宛わけあたふべきよし承しかども。つら父義時の心を思ふに。我よりもはるかに此舍第どもをば寵愛せられしぞかし。然ば父の心にはかやうにこそとらせたく思ひ給ひけんと推量りて。朝時重時以下に宗と多く分與て。泰時が分には三四番の末子の