ましりて。さすかに聲うちそへんもつゝましきにや。忍ひやかにてゐたる。うしろてのおかしうみゆれは。みすのうちの人も。みそかにわらふ。舟のうちにや。おいをはかこつらむといひたるを聞つけ給へるにや。大夫。徐福文成誑誕おほしと。うちすしたまふ。こゑもさまも。こよなういまめかしくみゆ。池のうき草とうたひて。ふえなと吹あはせたる。曉かたの風のけはひさへそ心ことなる。はかないことも。所から折からなりけり。源氏の物語おまへにあるを。とのゝ御らんして。れいのすゝろことともいてきたるついてに。むめのえたにしかれたるかみにかゝせ給へる。
すき者と名にし立れは見人のおらて過るはあらしとそ思ふ
たまはせたれは。
人にまたおられぬ者を誰か此すきものそとは口ならしけん
めさましうときこゆ。わた殿にねたる夜。とをたゝく人ありときけと。おそろしさに音もせてあかしたるつとめて。
よもすからくゐたよりけに泣々そ槇のとくちに叩侘つる
かへし。
只ならしとはかり叩く水鷄故あけてはいかに悔しからまし
ことし正月三日まて。宮たちの御いたゝきもちゐに。日々にまうのほらせ給ふ。御ともに。みな上臈もまいる。左衞門のかみいたい奉り給て。殿もちゐはとりつきて。うへに奉らせ給。ふたまの東のとにむかひて。上のいたゝかせたてまつらせ給ふなり。おりのほらせ給きしき。見ものなり。大宮はのほらせ給はす。ことしのついたち。御まかなひ宰相の君。れいのものゝ色あひなと。ことにいとおかし。藏人はたくみひやうこつかうまつる。かみあけたるかたちなとこそ。御まかなひはいとことにみえ給へ。わりなしや。くすりの女官にてふやの