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Page:Gunshoruiju18.djvu/770

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 行末はさそな心もつくはねのみねとはまなの橋にかけはや

引間にといへる所にとまりて。

 しるへして袖をひくまの野を行は萩やおはな〈すゝきイ〉の雪〈霜イ〉の降えに

あまがたにしる人あれば。そこに落着てしばし足などやすめ侍れば。道芝居士發句所望あれば。彼尊翁に應じて。霜月廿一日に。

 いろ見えてにほはぬ花か木々の雪

  さえて風なきまつの朝あけ  道芝

 打むかふをちのやまの端のとかにて  文爪

山內刑部少輔舘にて一座興行。

 つきてふれゆきやみやこをわすれ草  道芝

  冬にいろあるやとの梅か枝  等悅

 春さむき月にうくひすなき初て  通直

都にて馴し人。この所にくだり身まかり侍れば。彼廟所〈前イ〉にいたりて松風さびしく吹ければ。

 なれし人よいかにとこととへは答ふる計松風そふく

彼庵主返し。

 都よりしほれこしてもしほるらんなきか跡とふ今日の袂は

庵主侍れば。山家さびしからんとて。常々とひ給ふ人に。

 都よりすみよかりけり奧山の心をしれはさひしさもなし

また庵主かへし。

 都いてし心のまゝの心かはまたやまさとをうしとおもはぬ

是より不盡見むとて立出ける道に。原といへる所に。庵主に手ならふ人の里あれば。そこにいたりて。夜もすがらわかき人たちとかたり侍りて。

 夢うつゝ何と定めんかりまくらかはす言葉のうちに別れて

おなじ家のあるじ。ゐかけなどいひつけ侍れば。何となく心のおくゆかしくて。

 おもひきや濁らぬものを我心今朝しも何のいもゐせよとは

これより懸川といへる所にゆきて。しる人をたづねけれどあはぬをうらみて。

 〈う歟〉らみこしくすてふぬのをかけ川のかくるもほさぬ淚也鳬

又この所にて夕暮淋しくて。はるかに都のかたをみ送りて。