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Page:Gunshoruiju18.djvu/762

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はべらねばさだかにしる人もさぶらはず。されどあの磯にありしなどふるき人は申をきたりける。いざさせたまへをしへたてまつらんといふ程にまかりたれど。ことなるみどころもなく。たゞ波のよせくるのみにてぞ有ける。かく名ある木もあとかたなく。何事もむかしにかはりゆくこそもの每に悲しくははべれ。其かへさにしる人ありければ。かしまといふ所にたちよりけり。主さまにもてはやし。いざ此あたりにしかるべきかゝりあり。鞠なむつかうまつれとしゐて申けるほどにさりがたくおぼえて。裝束などとりよせ。日暮るまでまりけなどしてあそびける。其あたりなる男女どもみなあつまりきゐて見けり。田舍にはかゝることもめづらかにやおぼえけむ。さて月の山のはを澄のぼりてさやかなるに。故鄕人もかくやながむらんとおもひいでて歸にけり。玉ぼこのみちもはるかならねば。いくばくもあらぬに來つきぬれど。內に入るベくもおぼえで。爰のまへなりける辻堂のこぼれかゝりたるいたじきのうへに夜ふくるまでたちて。月やあらぬはるやむかしとひとりごち居て侍りけり。あくればふるさとへ文つかはす。したしかりけるともたちのもとに。かくなむ。

 思ひきや同し此世にありなからまた返りこぬ分れせむとは

おなじ國おのみちといふ所より船にのりて。おもしろき浦々にこゝろをなぐさめて。すこしふるさともわすれぬべきこゝちしてなむくだりけるに。春の物とて雨そゝぎしけるに。日もやう暮なむとすれば。人住所にもあらぬわづかなる沖の小嶋に舟よせて一夜寢にけり。たぐひなくものこゝろぼそう。うきねのあはれも身にしられて。まどろむとしもなくなみだのおりしりがほなるに。ときしもあれ。蓬