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Page:Gunshoruiju18.djvu/761

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磨明石の月をながめつゝ。はりまの國にしるよしししてまかりて。廿日あまりとゞまりぬ。そこにしたしかりける人のもとへ。おもしろかりけるさくらにさして。

 いてゝ行あとなくさめよ櫻花われこそ旅に思ひ立とも

かくよみをきて。日かずをへつゝゆくまゝに。備中のくにきびの中山につきぬ。つれさのあまり。こゝかしこ見ありきはベりて。彼ほそ谷川の邊にいたりて。

 けふそみるほそ谷川のをとにのみ聞わたりにしきひの中山

その水上にのぼりてみれば。ちいさき池のなかよりたえ出る淸水なりけり。かのしみづみな月のころほひもたゆることなしとなむいへり。その谷川のひろさ篳篥といふもののながさばかりなむ有ける。其夜は神主のいへにとまりぬ。翌日は雨そぼふりければゆきもやらず。其所に宮づくりし給ふはすなはちきびつ大明神と申奉る。火たき屋に釜ふたつをならべすへをきたりける。其かまひとつ神供をとゝのふる每におびたゞしくなりどよむよしをきゝてのぞみはべりける。まことにいかづちなどのやうにしばしとゞろきてきこえけり。これぞ此神祕となむいひつたへし。それより備後のともといふ浦ちかきわたりに十日あまりとゞまりぬ。そのほどかのうら見にまかりぬ。そこに一夜侍りて。明方の浦の景氣をみやれば。近きわたりの嶋どもうすがすみ。こぎくるふねもよしあるさまなり。

 忘れめや霞のひまの磯つたひ漕出る舟のとものうら波

さる歌よみたるよし主にかたりければ。感じてこれをかきとめける。さてみしとものうらのむろの木はとこよにあれととよめるはいづこぞとたづねはベりければ。むかしはこの浦に有つといひつたへたれど。今はあとかたも