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Page:Gunshoruiju18.djvu/731

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 雲きりのまよひも消て出る日やけふの祈を空にうく覽

廿五日。有明の月の出たるをみて。

 高野山この曉の月たにも待いつる程そひさしかりける

宿坊をいづとてかきつけ侍し。

 思ひいりし一心のおくをゝきて歸らん塵の世をいかにせん

かくて根來の十輪寺につきて侍りしに。夜に入て講問をこなふを聽聞して。

 くるしくも岩ね松かねこし道を忘れはてぬる法の庭かな

廿六日。いましばしもとゞまりて。これより和歌吹上も見侍れかし。そのしるベ侍れば。人をはしらせて申侍るベし。又連歌も一座などさまざまとゞめ申せしかども。えざらぬこととて立出侍るほどに。發句とてしきりにこひ侍しかば。筆にまかせて。

 ほとゝきすなくねころなるみ山かな

かくてさ野といふところのすこしみちよりは入たるかたへ。宗珀しるべして。ひるのやすみにかいつものなどとゝのへたるもめづらかになむ。高師濱の松原の下。天神の社の前に輿をたてて。

 袖のうへに松吹風やあたなみのたかしの濱のなをも立らん

くれにせまりて堺にかへりつきぬ。廿七日はすこしうちやすみぬれば。宗仲が寮にて一盞など侍りき。

廿八日は阿彌陀寺へ招請ありしかば。まかり向て大師の御作の辨才天など拜見。たうとくなん。近き寺の風呂に入て。夕つけで歸るほど。堺の濱見めぐりて。光明院にかへりしかば。宗碩京よりまうできて。歸京の道のことども申とのへぬるよし申侍る。いとうれしくなむ。

廿九日。高野參詣の前より廿首題をくばりたりしを。けふ夢庵にてとりかさぬベきよしありしかば。かしこにまかりて侍りしに。歌舞にをよびてその興あさからず。