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Page:Gunshoruiju18.djvu/686

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 さきたゝは此一もとも殘らしとかたみの時雨靑葉にそふる

六月の末角田川のほとりにて。遠村夕立。

 雲わくるひかけの末も夏草にいるまの里やゆふ立のそら

同廿八日。むさしののうち中野といふ所に平重俊といへるがもよほしによりて。眇々たる朝露をわけ入て瞻望するに。何の草ばのすゑにも唯白雲のみかゝれるをかぎりと思ひて。又中やどりのさとへかへり侍りて。

 露はらふ道は袖よりむらきえて草はにかへるむさしのの原

漸日たかくさしのぼりて。よられたる草の原をしのぎくる程。あつさしのびがたく侍りしに。草の上にたゞ泡雪のふれるかとおぼゆる程に。ふじの雪うかびて侍り。

 夏しれる空やふしのね草のうへの白雪あつき武藏のの原

ほりかねの井ちかき所にて。

 そことなく野はあせに鳬紫もほりかねのゐの草はならねと

七日に鳩が井の里滋野憲永がもとにて。秋增戀。

 きのふかは思ひし色のあさは野も木からしになる秋の夕暮

初秋の比。よふかき道をくるに。入間の舟渡りまでみをくる人あまた侍りしに。角田川の朝ぎりいづこをほとりともしらず。小舟の行ちがふかひの音のみ身にしみて哀に覺え侍しかば。彼翁かたへ申送り侍し。

 おもかけそ今も身にしむ角田川あはれなりつる袖の朝霧

九月十三夜。白井戶部亭にて。松間月。

 すみまさるほとをもみよと松のはの數あらはなる峯の月影

九月盡に長野陣所小野景賴が許にて。暮秋時雨。

 誰袖の秋のわかれのくしのはの黑かみ山そまなくしくるゝ

十一月の末に上野のさかひ近き越後の山中石白〈上杉相摸守房定于時法名常泰旅所。〉といふ所へ源房政にたぐへて歸路をもよほすべきよし侍りしかば。白井の人々餞別せしに。山路雪。

 かへるとも君かしほりに東路の山かさなれる雪やわけまし

廿七日。山雪にむかひて朝立侍。利根川をはる