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Page:Gunshoruiju18.djvu/654

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 むかふよりうき世のさかと厭ふ身をよしやと許す花の蔭哉

 彌生山くれ行空に契るらん春もとまらぬ入あひの聲

  夏

 汲たえし野中の淸水いつしかに又尋ぬへき夏はきにけり

 しきたへの袖の淚をむつましとなれも昔に匂ふたちはな

 るりとみる人と魚との心にもまさる御拔やそてのうは浪

  秋

 りうのすむ都も秋やしら浪の立そふおきつはつかせのこゑ

 くり返しむかしを今にすむ月のめくる光やしつのをた卷

 わくらはにそめし椿を初にて時雨につくす秋の色かな

  冬

 うき世とて誰も朝夕なけく身をしらていつくと冬のきぬ覽

 庭の松をしのふすまはしらね共先あたゝかに積る雪かな

 世中の人の心をさく梅のいそくと年やくれてゆくらん

  雜

 らむとなる關の東もこゝのへも皆おさまりて道そたゝしき

 いまははや雲霧はれてふしの雪都にみつと人にかたらん

かくよみ侍るしるしにや。少取なをし侍る。神な月にもなりぬ。むかしは今川上總介範政老僧歌の友にて朝夕ともなはれしかども。今は世中うつりて知人もなし。中頃臨川坊とて都にてみし人府中に住侍るが。くだりたる山ききて。せうそこありて。ふしぎなる草庵を結び侍る。又うつの山をもみよかしなどありて。迎をたびたるに思立侍る。まことにうつの山は逢人もなし。夢にも人にとか業平の詠ぜしことなどおもひいでて。蔦のはを分侍るにも。ききしにまさる心ちして。

 老ぬれはさなから夢そうつの山蔦の葉くらき霜のふる道

さてかの草庵につきて。昔の物がたりなどし侍るに。彼範政の孫上總介義忠よりくだりたるよしきゝ給て。

 萩かえのもとのはこそはちりぬとも梢也とて忘れさらめや

これはかの範政老僧愚身など參會せし昔の事おぼし出てかくよみ給にや。返。

 荻かえのむかしをとへは月まても先玉ちらす露のことのは

又かれより。