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わすれめや殘る廿日の月かほをほのみや川の春の曙
うへ川の橋と申所にて。
旅人のかけさへみゆるわたり哉春行水の上川のはし
よひのもりを。
此比の月見る宵の森ならは猶旅人の立やよらまし
うら〳〵と過侍るに。あまどものしはざさまざま也。汐干にまてと云ものさしとるを見て。
いせの海のあまのまてか
あこぎがうらにて。
あひきするあこきか浦の沖つ浪かへりみるめや旅も重つ
あふのうらはいづくなるらん。
春深みあふのうらなし時きぬとかたえの外も花や咲らん
みぎはにつのぐみたる蘆なども見え侍り。
かりねにも春やは人のおりしかんまたうら若きいせの濱荻
けふの御とまりはあのゝつ也。日高く着て。三條の宰相中將家歌よませられ侍りしに。
春月
有明の比にも成ぬさらてたに春は霞をいてかての月
待戀
たか爲に催すかねそたのめしも我は忘ぬ夕暮の空
旅行
敷嶋の道廣き世の旅なれは言の葉草や枕にもせん
廿二日。しらつかの松を見やりて。
霞立綠の末とひとつにて明行空のしらつかのまつ
とよく野にて。
なひくてふ民の草葉の末なれや年もとよくののへの道芝
野澤邊のあたりに。野飼の牛あまたみえ侍る。
澤邊なる野飼の牛もおのつからつのくむ□
くるまやといふ所あり。
日そ永き道は遙々めくれともまた車やのめくるとはなし
關川とかやを。
君か代に流れ久しき關川の千年にこゆる浪のまに〳〵
野せの町やと申わたり。すみれ咲たるをみて。
春深き野せの町屋つほ菫色に染てふ人やつむらん
坂の下過てすゞか山こえ侍るに。つゝじ咲。籐匂ひて。暮春の興をつどへたるに。鶯さへしきりになく。
咲きにけり坂の下てる姬つゝし遠き神代の春を殘して