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廿日。御參宮の日也。夜もすがら雨ふり風さはがしかりしが。辰の刻計空こゝちよく晴て。御出の儀ことにありがたくぞみえさせおはしましける。公卿殿上人馬くらをかざり。衞府御隨身あざやかなる袖をつらねて供奉し侍るよそほひ。きら〳〵しくぞ侍りし。抑御神五十鈴の川上に宫所をしめ。高天の原に千木高知。下つ磐根に大宮柱廣敷たてゝしづまりまします事は。世を守り。國をたもち。人をはごくむ御ちかひ成るべし。今我君豐蘆原千五百秋瑞穗國をつかさどりおはしまして。神をあがめ。政をたすけ。民をなで給ふ御めぐみも。神慮に隔なくおはしますは。太田命の八萬歲をたもちましまして。御子孫萬世ならん事のいともかしこく覺侍るまゝに。詠進三首。
今朝は又天の八重雲晴にけりよのまの雨や道淸むらん
およふへし君か齡も萬とし八度重し神のむかしに
君も猶幾世々かけて仰かまし高天の原の神のしめ繩
同じ夜法樂になぞらへて。心ひとつによみ侍りし六首。
春
言の葉の花に殘れと祈る哉高き神代の春の匂ひを
夏
あふきみる心も凉し神風やなひく千枝の松の村たち
秋
名に高き神路の山の秋の月嘸よゝ越て君照すらん
冬
年つもるかけをもみよと朝熊やかゝみの宮にふれる白ゆき
戀
さのみやはつれなかるへき絕て猶思ふ御祓の數を重ん
雜
たのむそよ內外の森のゆふたすきかけてを惠め此世後の世
廿一日。つとめて山田を御立の時。
五十鈴川名に流けり我君のいのるてふことなるにまかせて
宮川渡り恃るに。明方の月さやかにいと神さびけり。