戀しのふ心やたくふ朝夕に行てはかへるをちのしら雲
又おなじたびのだいにて。
かりそめの草の枕のよな〳〵を思ひやるにも袖そ露けき
とある所にも。又かへりごとをぞかきそへたる。
秋ふかき草の枕に我そなくふりすてゝこしすゝ蟲のねを
又此五十首のうたのおくに。こと葉をかきそふ。大かた歌のさまなどしるしつけておくに昔の人の歌。
是をみはいか計かとおもひつる人にかはりてね社なかるれ
とかきつく。じゞうのをとうと
立別れふしの煙をみても猶心ほそさのいかにそひけん
又是も返しをかきつく。
かりそめに立別ても子をおもふ思ひをふしの煙とそみし
また權中納言の君。こまやかに文かきて。くだり給ひし後は。うたよむ友もなくて。秋に成てはいとゞおもひいできこゆるまゝに。ひとり月をのみながめあかしてなどかきて。
東路の空なつかしきかたみたに忍ふ淚にくもる月かけ
此御返事これも古鄕の戀しさなどかきて。
かよふらし宮この外の月みても空なつかしきおなしなかめは
都の歌ども。こののちおほくつもりたり。又かきつくべし。
しき嶋や やまとの國は あめつちの ひらけ初し
むかしより 岩戶を明て おもしろき かくらのことは
うたひてし されはかしこき ためしとて ひしりの御世