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Page:Gunshoruiju18.djvu/526

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たうととかやいふ所にとゞまりぬ。

廿ニ日のあかつき。夜ぶかき有明のかげにいでてゆく。いつよりもものがなし。

 すみわひて月の都を出しかとうき身はなれぬ有明の影

とぞおもひつゞくる。ともなる人。有明の月さへかさきたりといふをきゝて。

 旅人のおなし道にや出つらん笠うちきたる有明の月

たかし山もこえつ。うみ見ゆる程いとおもしろし。浦かぜあれて。松のひゞきすごく。浪いとたかし。

 我ためや浪もたかしの濱ならん袖の湊の波はやすまて

いとしろきすざきに。くろきとりのむれゐたるは。うといふとりなりけり。

 白濱に墨の色なるしまつとり筆もをよはゝゑにかきてまし

はまなのはしよりみわたせば。かもめといふ鳥いとおほくとびちがひて。水の底へもいる。岩の上にもゐたり。

 鷗ゐる洲崎の岩もよそならす浪のかけこす袖にみなれて

こよひはひくまのしゆくといふところにとゞまる。このところのおほかたの名は[名をばイ]。はま松とぞいひし。したしといひしばかりの人々などもすむ所なり。すみこし人のおもかげもさま思ひ出られて。又めぐりあひてみつる命のほども。かへすあはれなり。

 濱松のかはらぬかけを尋きてみし人なみに昔をそとふ

その世にみし人のこむまごなどよびいでてあひしらふ。

廿三日。天りうのわたりといふ。舟にのるに。西行がむかしもおもひいでられていと心ぼそし。《西行法師繪詞云東のかたさまへ行ほとに遠江國天龍のわたりにまかりつきて舟にのりたれは所なしおりよと鞭をもちてうつほとにかしらわれてちなかれてなん西行うちわらひてうれふる色もみえておりけるを》くみあはせたる舟たゞ一にて。おほくの人のゆきゝにさしかへるひまもなし。

 水の淡の浮世にわたる程をみよ早瀨の小舟棹もやすめす

こよひはとをつあふみみつけのこふといふ所にとゞまる。里あれて物おそろし。かたはらに