このページは校正済みです
暮はつるほどにゆきつきたれば。思ひなしにや。こゝもかしこもなをあれまさりたる心ちして。所々もりぬれたるさまなど。なにゝ心のとゞまるべくもあらぬをみやるも。いとはなれまうきあばらやの軒ならんと。そゞろにみるもあはれなり。おい人はうちみえてこよなくおこたりざまにみゆるも。うきみをたればかりかうまでしたはんと哀も淺からす。その後は身をうき草にあくがれし。こゝろもこりはてぬるにや。つく〴〵とかゝる蓬がそまに朽はつべき契こそはと。身をも世をも思ひしづむれど。したはぬこゝちなれば又なりゆかむはていかゞ。
我よりは久しかるへき跡なれと忍はぬ人はあはれともみし
右轉寢記以扶桑拾葉集挍合了