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Page:Gunshoruiju18.djvu/518

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くものうし。こゝとてもまた立歸らむ事もかたければ。ものごとになごりおほかるこゝちするにも。うちつけにものむつかしき心のくせになむ。つねより居つるはしらのあらしきが。なつかしからざりつるも。立はなれなんはさすがに心ぼそくて。人みわくべくもあらず。ちいさく書つくれど。めはやき山賤もやとつゝましながら。

 忘るなよあさきのはしらかはらすはまたきて馴る折も社あれ

このたびはいと人ずくなに心ぼそけれど。都をうしろにてこしおりのこゝちには。こよなく日數のすぐるも戀しきこゝちするぞ。あやにくに我こゝろより思ひたちていでぬれど。われながら定めなく旅の程も思ひしられざれど。いとはずに日數もうらゝかにとゞこほる所もなかりけるを。ふはの關になりて雪ただふりに降くるに。風さへまじりて吹雪もかきくれぬれば。關屋ちかくたちやすらひたるに。關守のなつかしからぬおもゝちとりにくゝ。なにをがなとゞめんと。みいだしたるけしきもいとおそろしくて。

 かきくらす雪まをしはしまつ程にやかてとゝむるふはの關守

京に入日しも雨降いでて。鏡の山も曇りてみゆるを。くだりしおりもこの程にて雨降出たりしぞかしと思ひいでて。

 このたひは曇らは曇れ鏡山ひとをみやこのはるかならねは

かくおもひつゞくれど。誠にかの人を都はちかき心のみばかりにて。いつを限りにと思ひかへすぞまたかきくらす心ちしける。日たくるまゝに。雨ゆゝしく晴て。しろき雲おほかる山おほかれば。いづくにかと尋ぬれば。ひらの高ねやひえの山などに侍るといふを聞に。はかなき雲さへなつかしくなりぬ。

 きみもさはよそのなかめやかよふらん都の山にかゝる白雲