Page:Gunshoruiju18.djvu/514

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を。かくてしもやとてまた故鄕にたちかへるにも。まつならぬ梢だにそゞろにはづかしくみまはされて。

 消かへりまたはくへしと思ひきや露の命の庭の淺ちふ

なげきながらはかなく過て秋にもなりぬ。ながき思ひのよもすがらやむともなききぬたの音。寢屋ちかききりすのこゑの亂れも。ひと方ならぬねざめの催しなれば。壁にそむけるともし火のかげばかり友として。あくるをまつもしづこゝろなく。盡せぬ泪の雫は恣うつ雨よりもなり。いとせめてわびはつるなぐさみに。さそふ水だにあらばと朝夕のこと草に成ぬるを。そのころ後の親とかたのむべきことはりも淺からぬひとしも。遠つあふみとかや聞もはるけき道を分て。都のものもうでせんとてのぼりきたるに。何となくこまやかなる物語などするつゐでに。かくてつくとおはせんよりは。ゐなかの住ゐもみつゝなぐさみたまへかし。かしこも物さはがしくもあらず。心すまさんひとはすみぬべきさまなるなど。なをざりなくいざなへど。さすがひたみちにふりはなれなん都のなごりも。いづくをしのぶこゝろにか。心ぼそくおもひわづらはるれど。あらぬすまゐに身をかへたると思ひなしてとだに。うきをわするゝたよりもやとあやなく思ひたちぬ。くだるベき日にもなりぬ。よふかくみやこを出なんとするに。ころは神無月の廿日あまりなれば。有明の光もいと心ぼそく。風の音もすさまじく身にしみとをる心ちするに。人はみな起さはげど。人しれずこゝろばかりには。さてもいかにさすらふるみのゆくゑにかと。たゞ今になりては心ぼそきことのみおほかれど。さりとてとゞまるベきにもあらねば出ぬるみちすがら。先