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Page:Gunshoruiju18.djvu/515

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かきくらす泪のみさきにたちてこゝろぼそく悲しきことぞなにゝたとふべしとも覺えぬ。ほどなく逢坂山になりぬ。をとに聞し關の淸水もたえぬ淚とのみ思ひなされて。

 越わふる逢さか山の山水はわかれにたへぬ淚とそ見る

あふみの國野路といふ處より雨かきくらしふり出て。みやこの山をかへりみれば。霞にそれとだにみえず。隔りゆくもそゞろに心ぼそく。何とて思ひ立けんとくやしきこと數しらず。とてもかくてもねのみなきがちなり。

 すみわひて立わかれぬる故里もきてはくやしき旅衣かな

道のほどめとゞまる所々おほかれど。こゝはいづくともけぢかくとふべき人もなければ。いづくの野も山もはるとゆくを。とまりもしらす。人のゆくにまかせてゆめぢをたどるやうにて日數ふるまゝに。さすがならはぬひなのながぢに。おとろへはつる身もわれかのこゝちのみして。みのおはりのさかひにもなりぬ。すのまたとかやひろとおびただしき河あり。ゆきゝのひとあつまりて舟をやすめずさしかへるほど。いとところせうかしがましくおそろしきまでのゝしりあひたり。からくしてさるべき人みな渡りはてぬれど。ひともこしや馬とまちいづるほど。河のはたにおりゐて。つくとこしかたをみれば。あさましげなる賤の男ども。むづかしげなるものどもをふねにとりいれなどする程。なにごとにかゆゝしくあらそひて。あるひは水にたふれいりなどするにも。見なれずものおそろしきに。かゝるわたりをさへ隔はてぬれば。いとゞ都の方はるかにこそなりゆくらめと思ふには。いとゞなみだおち增りてしのびがたく。かへらむほどをだにしらぬこゝろもとなさよ。過きつる日數のほどなきに。とま