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Page:Gunshoruiju18.djvu/509

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ぬべきこゝちして。やをらはしをあけたれば。つごもり比の月なき空に。天雲さへたちかさなりて。いとものおそろしうくらきに夜もまだふかきに。とのゐ人さへ折しも打こはづくろふもむづかしと聞ゐたるに。かくても人にやみつけられんとそらおそろしければ。もとのやうにいりてふしぬれど。かたはらなる人うちみじろぎだにせず。さきも。とのゐびとの夜ふかくかどをあけて出るならひ也ければ。その程を人しれずまつに。こよひしもとくあけていでぬるをとすれば。さるは心ざす道もはかしくも覺えず。爰も都にはあらす北山の麓といふ處なれば。ひとめしげからず。木の葉のかげにつきて。夢のやうにみをきし山ぢをたゞ獨行こゝち。いといたくあやうくおそろしかりける。山びとのめにもとがめぬまゝに。あやしくものぐるおしきすがたしたるも。すべて現のことともおぼえず。さてもかのところにし山の麓なれば。いとはるかなるに。夜なかより降いでつる雨の明るまゝにしほとぬるゝ程になりぬ。故里よりさがのわたり迄はすこしもへだたらずみわたさるゝほどの道なれば。さはりなくゆきつきぬ。夜もやうほのとする程に成ぬれば。みちゆきびともこゝもとはいとあやしととがむる人もあれば。物むづかしくおそろしき事このよにはいつかはおぼえむ。たゞ一すぢになきになしはてつる身なれば。あしのゆくにまかせて。はや山ふかく入なむと打もやすまぬままに。苦しくたへがたきことしぬばかり也。いるあらしの山の麓にちかづくほど雨ゆゝしく降まさりて。むかへの山をみれば。雲のいくへともなくおりかさなりて。ゆくさきもみえず。からうじてほうりんのまへ過ぬれば。はては