このページは校正済みです
むかしのあとたえず。かの業平がす行者にことづてしけん程はいづくなるらんと見行ほどに。道のほとりに札をたてたるをみれば。无緣の世すて人あるよしをかけり。みちより近きあたりなれば少打入てみるに。わづかなる草の庵のうちに獨の僧あり。畫像の阿彌陀佛をかけ奉て。淨土の法もんなどをかけり。其外にさらにみゆる物なし。發心のはじめを尋きけば。わが身はもと此國のものなり。さしておもひ
世をいとふ心のおくや濁らましかゝる山邊の住居ならては
此庵のあたり幾程遠からず。崎と云所にいたりて。おほきなる卒都婆の年經にけると見ゆるに歌どもあまた書付たる中に。東路はこゝをせにせん宇津の山哀もふかし蔦のした道とよめる。心とまりておぼゆれば。そのかたはらにかきつけし。
我も又こゝをせにせんうつの山分て色ある蔦のした露
猶うちすぐるほどに。ある木陰に石をたかくつみあげて。めにたつさまなる塚あり。人にたづぬれば梶原が墓となむこたふ。道のかたは