Page:Gunshoruiju18.djvu/475

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罪業の山にかくれて駈どもいまだ出す。煩惱の虎は功德のはやしを別て追どもかへらず。睡眠の閨にはあかつきのかねの聲うちおどろかせども諸行無常の吿をさとらず。遊戲の床には暮の日さしおどろかせども分段の有爲のことはりわきまへず。老少不定の悲は眼にさへぎりて雲のごとくにさはげども心空にしておもはず。先後相違のわかれは耳にみちて風のごとくにひらけども聞つれなくしてあはれまず。老たるは老たればいよ餘命をおしみ。わかきは若ければ實に將來を期す。其間山水邈にながれて依に泉にかへる。風煙命滅て忽に冥途にまどひ。又貯持財はおしめどもになはず。養居僮僕は哭すれども隨はず。終に天使にめされて地獄に落ぬれば冥路山さかし。嬰兒のあゆみにたゞよひてひとり行黃泉水はやし。單己のわたりに溺て身をながす。かなしきかなかなしきかな。獄卒の呵責にかゝりて後悔魂をくだき。琰王の斷罪にをのゝきて前非の舌をまく。惡行はぢをあらはす鏡の中の影。自業のむかへは陳じがたし机上の文。鳴呼十八猛鬼の忿怒といかれる聲。天雷のおちかゝるがごとし。六十四眼の睚眦とにらめる。熟鐵のほどばしるに似たり。迯とすれども迯るにむなし刄のふるところ。よけんとすれどもよけられず焰にむせぶとき。心うきかな猛火の薪となりて萬億歲罪根山の林夏ひさし。寒嵐の水に沈で無量刧業報池の水春に別たり。我等が前罪こゝに謝せずば。後悔またいかゞせん。こゝろあらん人たれかかなしまざらんや。

 見ねはにやいたき心もなかるらんきくも身にたつ劔はの枝

但極樂西方にあらずをのれが善心のますにあり。泥梨地のそこにあらずをのれが惡念の心