Page:Gunshoruiju18.djvu/474

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妙のかざりは身のうへにそなはれり。をよそ三十一金の月胸にはれ。第一義空の水心にすめり。此故に無始來のねぶりはゆめながくさめ。六趣輪の冥は盲眼ひらけたり。彼無常念王の古鄕を忍ぶちぎり娑婆にあつく。法藏因位の舊臣を顯れんこゝろざし我等にふかし。此に依て九品覺王の善政をたるゝ一念。奉公の輩ならびに平等引接の賞にあづかりて。諸天薩埵の僉議をなす。六賊重罪の犯却而皆空無漏の旨を奏す。七寶の高臺には四十八願の主五刧思惟のひかりをはなちて念佛のものをてらし。二脇片座には三十三尊大悲弘誓のあみをたれて苦海の沈沒をすくふ。故に三世の佛の濟度にもたれる五逆の罪人も。願海不捨の舟に棹さして彼岸にわたり。十方土の淨刹にすてられたる此界の惡從も。大雄起世翅にかかりて西天に飛ん。あはれとく生れてみちに入ばやな。

 なみ風もみのりの聲をとく聞て見るめくるしき海を出はや

 迷ひきて又まよひこんかりのやとになかくかへらん道にかへ覽

束國にさまよひ行子あり。本のみやこを別てかりのやどにふせり。西刹に訪尋る母います。あはれもとめて彼國に導を其母といます。佛は三字の名號を子どもにさづけて。三因佛性のかくれたるをよび出し。十念の來迎を最期にちぎりて。十地證王の位につく。信力よはきものには他力をあたへてこれをすくふ。たをれふしたる赤子を親のいだくがごとし。念緖つよき願緖にすがりてみづからすゝむ。驥につく蠅の千里に翔るがごとし。されども具[縛力]の浮身は一榮の肴にすゝめられて三毒の酒に醉ふす。世路の嶮難につかれて佛界の正道にまよはず。妻子をおもふ心冥にくらまされて心佛のひかりをへだてたり。菩提の鹿は