Page:Gunshoruiju18.djvu/473

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り神に祈る。功それいかゞせん。我きく佛神は孝養のために擁護のちかひをおこし。經論は報恩のために讃嘆のこと葉をのべたりと。壯齡のむかしは將來をたのみて天に祈りき。衰邁の今は先報をかへりみて身をうらむ。もしこれ不信の雲におほはれて感應の月顯れざるか。もしこれ過去の福因をうへずして現在の貧果を得たるか。先報によるべくは。佛のちかひたのむやいなや。誓願によるべくは。我孝なんぞむなしき。信否ともに感じて妄恨みだりにおこる。天眼あひなだめて哀みをたれ給へ。悲母の目前に中懷を謝して白髮をおとし。愚子が身のうへには本望をとげず黑衣をきる事を。夢の間の笋はたとひ一旦の雪にもとめうしなふとも。覺路の蓮はかならず九品の露にひらきをくらん。子養は子のこゝろざしにつくす。風樹は風の恨のこす事なかれ。

 いかにせん結ふ此身をまたすして秋にはゝそのおつる山風

東國はこれ佛法の初道なれば。發心の沙彌ことさらに修行すべき方なり。この故に木方初發の因地より萠して。金刹極證の果門を開かんとおもへり。觀夫けがらはしき濱路を過行だにも。白砂なをおもしろく見ゆ。まして極樂金繩のみちにおもひやるもゆかしけれ。銀樹七重の風無苦のこゑをしらべ。紫蓮千葉の色に染。功德の池には水煩惱のあかをあらひ。善根のはやしには樹菩提のこのみをむすぶ。ゆゐたる宮殿は十方に飛て居ながらすぐ。ことに利生を約諾す。生る人はみな說法集會の場にまじはりて無量の命を延年し。來るむかしは悉見佛聞法の室に誇て不退の樂に世會す。久遠世々の父母は珍本覺の如來に顯れ。過去生々の妻子はなづかしくて新來菩薩にむすびたり。法喜禪悅の味は口のうちにみち。端嚴殊