Page:Gunshoruiju18.djvu/471

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り治りて見ゆ。

 夜の戶ものとけき宿にひらく哉曇らぬ月のさすにまかせて

此緣邊に付ておろ歷覽すれば。東南の角一道は舟檝の津。商賣の商人百族にぎはひ。東西北の三方は高卑の山風のごとくに立廻て所をかざれり。南の山の麓に行て大御堂新御堂を拜すれば。佛像烏瑟のひかり瓔珞眼にかゞやき。月殿畫梁のよそほひは金銀色をあらそふ。次にひがし山のすそに臨て二階堂を禮す。是は餘堂の踔躒して感歎をよびがたし。第一第二の重檐には。玉のかはら鴛の翅をとばし。兩目兩足のならび給へし臺は。金の盤鶴燈をかゝげたり。大方魯般意匠窮て。成風天に望むにすゞしく。毗首手功をつくせり。發露人の心にもよほす。見れば又山に曲木あり。庭に恠石あり。地形のすぐれたる佛室と言つべし。三壺雲に浮べり七萬里の浪池邊によせ。五城霞に峙り十二樓の風階の上にふく。誤て半日の客たりうたがふらくは七世の孫に逢ん事を。夕にをよんで西に歸りぬ。鶴岡にとて鳩宮にまいらず。あけの玉がき金鏡に映じ。白妙のにしき幣風にそよめき。銀の鐺は朱濫をみがく。錦のつゞれははなにひるがへる。しばらく法施奉て瑞籬に候すれば。神女がうたの曲は權現垂跡の隱敎にかなひ。僧侶の經のこゑは衆生成道の因緣を伸。彼法性の雲のうへに寂光の月老たりといへども。若宮の林の間に應身の風あふぎてあらたなり。

 雪のうへにくもらぬかけをおもへとも雲より下に曇る月哉

月のひかりにたゝずみて。石屋堂の山のこずゑはるかにながめていぶせくかへりぬ。適下向なれば遊覽のこゝろざし切々なれども。經廻わづか一旬にして。上洛すでに五更になりぬれば。なごりのむしろをまきて出なん事を