Page:Gunshoruiju18.djvu/468

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みをふくみなんことを。彼東平王の舊里をおもふ墳上の風雨になびく。誠にさこそとあはれにこそは覺ゆれ。

 おもひきや都を夜半にわかれ路の遠山野へに露きえんとは

夫人のうまれたるは。庭におつる木葉の風にうごくがごとし。風やみぬればうごかず。死と思へば旅に出る行客のやどにとまるがごとし。こゝにわかれぬといへども。かしこにはうまれぬ。たゞ煩惱のうらみのみさる事をかなしみ。愚痴の心をしらざる事をうらむべし。はやく別れをおしまん人は。再會を一仙の國に約し。恩をこひんひとは。追福を九品のみちに訪べし。

 今更になになけく覽末の露もとよりきえん身とはしらすや

大磯のうら小磯のうらをはるとくれば。雲のかけはしなみのうへにうかみて。かさゝぎのわたしもりあまつ空にあそぶ。あはれさびしきたびの空かな。ながめなれてや人はゆくらん。

 大磯やこいそのうらのうら風にゆくともしらすかへる袖哉

さがみ川をわたりぬれば懷嶋に入。砥上が原を出。南のうらを見やればなみのあやをりはへて白き色をあらひ。北原をのぞめば草の綠そめなし淺萸さらせり。中に八松と云所あり。八千歲のかげにたちよりて。十八公の榮をさかりにす。

 八松のやちよのかけに思ひなれてとかみか原に色も變らし

固瀨川をわたりて江尻の海汀をすぐれば。江の中に一峯の孤山あり。孤山に靈社あり。江尻大明神と申。威驗ことにあらたにして。御前を過る下り船は上分を奉る。法師はまいらぬときけば。そのこゝろをたづぬるに。むかし此邊の山寺に禪僧有て法華經を讀誦して夜をあかし日をくらす。其時女の形出來て夜ごとに聽