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Page:Gunshoruiju18.djvu/444

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たすく。行々として重て行々たり。山水野塘の興こそみものをまし。歷々として更に歷々たり。海村林邑の感いやめづらかなり。此道若四道の間に逸興のすぐれたるをかね。又孤身が斗藪の今旅はじめなれば。遇孤たる舊客猶ながめを等閑にせず。况や一生の新賓なれば感思おさへがたし。感思の中に愁傷の交事あり。所謂母儀の老を□又幼を都にとゞめて不定の再覲を契おく。無狀かな愚子が爲躰。浮雲に身を乘て旅天にまよひ。朝露の命にて風のたよりにたゞよふ。道をおなじうするものは我をしらざる客なり。語は親昵に契りていづちかはなれなんとする。長途に疲れて十日あまり。窮屈頻に身をせむ。湯井の濱に至りて一時半假息しばらく心をゆるぶ。時に萍實西にしづむ。舊里を忍て後を期し。桂花東にひらけ。外鄕に向て小懷をなやます。仍三十一字を綴りて。千度思ひ萬度懷て旅のこゝろざしをのぶ。これは是文を以てさきとせず。歌を以て本とせず。只興にひかれて物のあはれを記するのみなり。四月四日の曉。都出し朝より雨にあひて。勢田の橋のこなたにしばらくとまりてあまじたくしてゆく。けふあすともしらぬ老人を。ひとり思ひ置てゆけば。

 思ひをく人にあふみのちきりあらは今歸りこん勢田の長橋

はしのわたりより雨まさりて。野徑の道芝露殊にふかし。八町なはてを過れば行人たがひに身をそばめ。一邑のさととをれば亭犬頻に形をほゆ。今曰しもならはぬ旅の空に雨さへいたくふりて。いつしか心のうちもかきくもるやうに覺えて。

 旅衣またきもなれぬ袖の上にぬるへきものと雨はふりきぬ

田中打過民宅打過てはると行ば。農夫竝び立てあら田をうつこゑは行鴈のなきわたる