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Page:Gunshoruiju18.djvu/44

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ゆへしくして。すはまのほとりの水に。かきませたり。

 紀の國のしらゝの濱に拾ふてふこの石こそは巖ともなれ

あふきとものおかしきを。その比は人々もたり。

八月廿日あまりのほとよりは。上達部。殿上人とも。さるへきはみなとのゐかちにて。はしのうへ。たいのすのこなとに。みなうたゝねをしつゝ。はかなうあそひあかす。ことふえの音なとには。たとしきわか人たちの。とねあらそひ。いまやう歌ともゝ。所につけてはおかしかりけり。宮大夫なりのふ齊信。左宰相中將經房。兵衞督。みのゝ少將なりまさ濟政なとして。あそひ給ふ夜もあり。わさとの御遊ひは。殿おほすやうやあらん。せさせ給はす。とし比さとゐしたる人々の。なかたえをおもひおこしつゝ。まいりつとふけはひさはかしうて。其ころは。しめやかなることなし。廿六日。御たきものあはせはてゝ。人々にもくはらせ給ふ。まろかしゐたる人々。あまたつとひゐたり。うへよりおるゝみちに。辨宰相のきみの戶くちを。さしのそきたれは。ひるねし給へるほとなりけり。はき。しをん。いろのきぬに。こきかうちめ心ことなるをうへにきて。かほはひきいれて。すゝりのはこにまくらしてふし給へるひたいつき。いとらうたけになまめかし。繪にかきたる物の姬君の心ちすれは。くちおほひを引やりて。ものかたりの女のこゝちもし給へるかなといふに。見あけて。物くるをしの御さまや。ねたる人を。こゝろなくおとろかすものかとて。すこしおきあかり給へるかほの。うちあかみ給へるなと。こまかにおかしうこそ侍しか。おほかたもよき人の折からに。またこよなくまさるわさなり。九日。きくの綿を。兵[衞イ]のおも