Page:Gunshoruiju18.djvu/408

提供:Wikisource
このページは校正済みです

うへに五六日をすぐす。からうじて風いさゝかやみたるほど。舟のすだれまきあげて見渡せば。夕しほたゞみちにみちくるさま。とりもあへず。入江の田鶴の聲おしまぬもおかしくみゆ。くにの人々あつまりきて。その夜この浦をいでさせたまひて。いし津につかせ給へらましかば。やがて此御舟なごりなくなりなましなどいふ。心ぼそうきこゆ。

 あるゝ海に風より先に船出していし津の波と消なましかは

世中にとにかくに心のみつくすに。宮づかへとても。ことはひとすぢにつかうまつりつゞ[ゞイナシ]かばや。いかゞあらん。時々立いでばなになるべくもなかめり。としはやくは[ゝさイ]た過行に。わかわかしきやうなるもつきなうおぼえなげかるるうちに。身のやまひいとおもくなりて。心にまかせて物まうでなどせし事もえせずなりたればわくらはの立出もたえて。ながらふべき心ちもせぬまゝに。おさなき人々を。いかにもいかにも,わがあらん世にみをく事もがなと。ふしおき思ひなげきたのむ人のよろこびのほどを心もとなくまちなげかるゝ天喜五年七月卅日從五位橘俊通任信濃守得替公文に。秋に成て待いでたるやうなれど。おもひしにはあらず。いとほいなくくちおし。おやのおりより立歸つゝみしあづまぢよりはちかきやうに聞ゆれば。いかゞはせんにて。ほどもなくくだるべき事共いそぐに。かどでは。むすめなる人のあたらしくわたりたる所に。八月十よ日にす。のちのことはしらず。そのほどのありさまは。物さはがしきまでひとおほくいきほひたり。廿七日にくだるに。おとこなるはそひてくだる。紅のうちたるに。荻のあを。しをんのおりもののさしぬききて。たち仲俊承曆元年閏十二月杢允文章生同三年正月廿七日式部丞寬治元年正月七日五位廿五日紀伊權守はきて。しりにたちてあゆみいづるを。それもをり物のあを。にびいろのさしぬきかりぎぬきて。らうのほどにて馬