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Page:Gunshoruiju18.djvu/407

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おなじ心にかやうにいひかはし。世中のうきもつらきもおかしきも。かたみにいひかたらふ人。ちくぜんにくだりて後。月のいみじうあかきに。かやう成し夜。宮にまいりて。あひてはつゆまどろまず。ながめあかいしものを。こひしく思ひつゝねいりにけり。宮にまいりあひて。うつゝにありしやうにて有とみて。打おどろきたれば夢成けり。月も山のはちかうなりにけり。さめざらましをといとゞながめられて。

 夢さめてねさめの床のうくはかりこひきとつけよ西へ行月

さるべきやう有て。秋頃和泉にくだるに。よどといふよりして。道のほどのおかしうあはれなる事いひつくすべうもあらす。たかはまといふ處にとゞまりたるよ。いとくらきに。夜いたうふけて。舟のかぢのおと聞ゆ。とふなれば遊びのきたるなりけり。人々けうじて。舟にさしつけさせたり。遠き火のひかりに。ひとへのそでながやかに。あふぎさしかくして歌うたひたる。いとあはれに見ゆ。又の日。山の端に日のかるほど。すみよしの浦をすぐ。そらもひとつに霧わたれる松のこずゑも海のおもても。なみのよせくるなぎさのほども。ゑにかきてもおよぶべきかたなうおもしろし。

 いかにいひ何にたとへてかたらまし秋のゆふへの住吉の浦

と見つゝ。つなで引すぐるほど。かへりみのみせられてあかずおぼゆ。冬になりてのぼるに。おほ[津イ]と云うらに舟にのりたるに。その夜雨風いはもうごくばかりふりふゞきて。神さへなりてとゞろくに。浪の立くるをとなひ。風の吹まどひたるさま。おそろしげなること。いのちかぎりつと思ひまどはる。をかのうへに舟をひきあげて夜をあかす。雨はやみたれど。風なをふきて船いださず。ゆくゑもなきをかの