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にところなどほりもてくるもおかし。いづる道は花もみなちりはてにければ。なにともなきを。十月ばかりにまうづるに。道のほど山のけしき。此頃はいみじうぞまさる物なりける。山のはにしきをひろげたるやうなり。たぎりてながれ行水。すいしやうをちらすやうにわきかへるなど。いづれにもすぐれたり。まうでつきて。そうぼうにいきつきたるほど。かきしぐれたる紅葉のたぐひなくぞみゆるや。
おく山の紅葉のにしき外よりもいかに時雨て深くそめけむ
とぞみやらるゝ。二年ばかりありて。又石山にこもりたれば。夜もすがらあめぞいみじくふる。たびゐは雨いとむづかしきものときゝて。しとみをしあげてみれば。在明の月の。たにのそこさへ曇りなくすみわたり。雨と聞えつるは。木のねより水のながるゝ音なり。
谷川のなかれは雨と聞ゆれとほかよりけなる在明の月
また初瀨にまうづれば。はじめにこよなくものたのもし。處々にまうけなどして。いきもやらず。山城の國はゝその杜などに。紅葉いとおかしきほどなり。初瀨川わたるに。
初瀨川立歸りつゝ尋ぬれは杉のしるしもこのたひやみむ
とおもふもいとたのもし。三日さぶらひてまかでぬれば。れいのならざかのこなたに。小家なとに。このたびはいとるいひろければ。えやどるまじうて。野中にかりそめにいほつくりてすへたれば。人はたゞ野にゐて夜をあかす。草のうへにむかばきなどを打しきて。うへにむしろをしきて。いとはかなくて夜をあかす。かしらもしとゞに露をく。曉がたの月。いといみじくすみわたりて。よにしらずおかし。
行衞なき旅の空にもをくれぬは都にてみし有明の月
なに事も心にかなはぬ事もなきまゝに。かやうにたちはなれたる物まうでをしても。道の