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つまちかき花たちばなのいとしろく散たるをながめて。
時ならす降雪かとそなかめまし花たちはなのかほらさりせは
あしがらといひし山の麓にくらがりわたりたりし木のやうにしげれる所なれば。十月ばかりの紅葉よもの山邊よりもげにいみじくおもしろく。にしきをひけるやうなるに。ほかよりきたる人のいま參りつる道に紅葉のいとおもしろき所の有つるといふに。ふと。
いつこにも劣らし物を我やとのよを秋はつる氣色はかりは
ものがたりの事をひるは日暮しおもひつゞけ。よるもめのさめたるかぎりは。是をのみ心にかけたるに。夢に見ゆるやう。此ごろ
咲とまち散ぬと歎く春はたゝわかやと顏に花をみる哉
あかさりし宿の櫻を春暮て散かたにしも獨見し哉
といひにやる。花のさきちるおりごとに。めのとなく成し折ぞかしとのみあはれ成に。おなじおりなく成玉ひし侍從大納言の御むすめの書を見つゝ。すゞろにあはれ成に。五月ばかり。夜ふくるまで物がたをよみておきゐたれば。きつらんかたもみえぬに。ねこのいとながうないたるをおどろきて見れば。いみじうおかしげなる猫あり。いづくよりきつるねこぞと見るに。あねなる人。あなかま人にきかすな。いとおかしげなる猫なり。かはんとある