御神なり。さては內侍所にすべら神となんおはしますといふ。伊勢の國まではおもひかくべきにもあらざなり。內侍所にもいかでかはまいりおがみ奉らん。そらの光をねむじ申べきにこそはなどうきておぼゆ。しぞくなる人あまに成て。すがく院に入ぬるに。冬頃。
淚さへふりはへつゝそ思ひやるあらし吹らむふゆの山里
かへし。
わけてとふ心のほとの見ゆる哉木陰をくらき夏のしけりを
あづまにくだりしおや。からうじてのぼりて。西山なる所におちつきたれば。そこにみなわたりて見るに。いみじう嬉しきに。月のあかき夜ひとよものがたりなどして。
かゝる世も有ける物を限りとて君にわかれし秋はいかにそ
といひたれば。いみじくなきて。
思ふ事かなはすなそといとひこし命のほとも今そうれしき
これぞ別れのかどでといひしらせしほどのかなしさよりは。たいらかにまちつけたるうれしさもかぎりなけれど。人のうへにてもみしに。老おとろへて。世にいでまじらひしは。」(底本三七八頁下段三行)みやこのうちとも見えぬ所のさまなり。ありもつかずいみじうものさはがしけれども。いつしかと思ひし事なれば。物語もとめて見せよ見せよとはゝをせむれば。三條殿の宮にしぞくなる人の衞門の命婦とてさぶらひけるたづねて文やりたれば。めづらしがりてよろこびて。御前のをおろしたるとて。わざとめでたきさうしどもすゞりの箱のふたにいれてをこせたり。嬉しくいみじくて。夜ひるこれをみるよりうちはじめ。又々もみまほしきに。ありもつかぬみやこのほとりに。誰かは物がたりもとめ見する人のあらん。まゝ母なりし人は。みやづかへせしがくだりしなれば。思ひしにあらぬことどもなどありて。世中恨めしげにて。外