Page:Gunshoruiju18.djvu/385

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れにてやみぬべき也。京にもさるべきさまにもてなして。とゞめんとはおもひよる事にもあらずと。よるひるなげかるゝを聞こゝち。花紅葉のおもひもみなわすれて。悲しくいみじく思ひなげかるれどいかゞはせん。七月十三日にくだる。五日かねては見んも中々成べければ。うちにもまいらイず。まひて其日は立さはぎて。時成ぬれば。今はとてすだれを引あげてうちみあはせて。淚をほろとおとして。やがていでぬるを見送る心ち。めもくれまどひて。やがてふされぬるに。とまるをのこのをくりしてかへるに。ふところがみに。

 思ふ事心にかなふ身成せは秋のわかれを深くしらまし

とばかりかゝれたるを。えみやられず。ことよろしき時こそこしおれかゝりたる事も思ひつづけけれども。かくもいふべきかたもおぼえぬまゝに。

 かけて社思はさりしか此世にてしはしも君に別るへしとは

とやかゝれにけん。いとゞひとめも見えず。さびしく心ぼそく。打ながめつゝ。いづこ計と明暮おもひやる。道のほどもしりにしかば。はるかに戀しく心ぼそき事限なし。明るより暮るまで。東の山ぎはをながめてすごす。八月ばかりにうづまさにこもるに。一條よりまうづる道におとこくるまふたつばかりひきたてゝ。物へ行にもろともにくべきひとまつなるべし。過て行にずいじんだつものをおこせて。

 花見にゆくと君をみるかな

といはせたれば。かゝるほどの事はいらへぬもびんなしなどあれば。

 千くさなるこゝろならひに秋の野の

とばかりいはせていき過ぬ。七日さぶらふほども。たゞ東路のみおもひやられてよしなし。とかくして[ことからうじてイ]はなれて。たいらかにあひみせ玉