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Page:Gunshoruiju18.djvu/384

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人は。十七八よりこそ經よみをこなひもすれ。さることおもひかけられず。からうじて思ひよることは。いみじくやんごとな[くイ]かたち有さま。ものがたりにあるひかる源氏などやうにおはせん人を年にひとたびにてもかよはし奉りて。うきふねの女君のやうに山里にかくしすへられて。花紅葉月雪をながめて。いと心ぼそげにて。めでたからん御文などを時々まちみなどこそせめとばかりおもひつゞけ。あらましごとにもおぼえけり。おやとなりなばいみじうやむごとなく我身もなりなんなど。たゞ行衞なきことをうち思ひすぐすに。おやからうじてはるかに遠きあづまになりて。年頃はいつしか長元五年二月八日任常陸六十おもふやうに。ちかき女子廿五ところになりたらば。まづむねあくばかりかしづきたてゝ。ゐてくだりて。海山のけしきも見せ。それをばさるものにて。わがみよりもたかうもてなしかしづきてみんとこそおもひつれ。我も人もすくせのつたなかけりれば。ありてかくはるかなる國になりにたり。をさなかりし時。東の國にゐてくだりてだに。こゝちもいさゝかあしければ。是をや此國にみすてゝ。まどはんとすらんと思ふ。人の國のおそろしきにつけても。わが身ひとつならばやすらかならましを。ところせうひきぐして。いはまほしき事もえいはず。せまほしき事もえせずなどあるが。わびしうもあるかなと心をくだきしに。いまはまいておとなになりにたるを。ゐてくだりて。わが命もしらず。京のうちにてさすらへむはれいの事。東のくにいなか人に成て。まどはんはいみじかるべし。京とてもたのもしうむかへとりてんとおもふるいしぞくもなし。さりとてわづかになりたる國をじし申べきにもあらねば。京にとゞめてながきわか