くて。さすがにわかい人にひかれて。おり〳〵さしいづるにも。なれたる人はこよなく何ごとにつけてもありつきがほに。我はいとわかうどに有べきにもあらず。又おとなにせらるべきおぼえもなく。時々のまらうどにさしはな・れてすゞろなるやうなれど。ひとへにそなたひとつをたのむべきならねば。我よりまさる人あるも。うらやましくもあらず。中々心やすくおぼえて。さるべき折ふしまいりて。つれづれなぐさむべき人とものがたりなどして。めでたきこともおかしくおもしろき折々も。我身はかやうにたちまじり。いたく人にも見しられむにも。はゞかりあんべければ。たゞおほかたの事にのみきゝつゝすぐすに。內の御ともにまいりたるおり。有明の月いとあかきに。わがねむじ申す天てる御神は。內にぞおはしますなるかし。かゝるおりにまいりておがみ奉らんとおもひて。四月ばかりの月のあかきに。いとしのびてまいりたれば。はかせの命ぶはしるたよりあれば。とうろの火のいとほのかなるに。あさましくおい神さびて。さすがにいとよう物などいひゐたるが。人ともおぼえず。神のあらはれ玉へるかとおぼゆ。又の夜も月のいとあかきに。ふぢつぼのひんがしのとをしあけて。さべき人々物がたりしつゝ月をながむるに。梅つぼの女御ののぼらせ給なるをとなひ。いみじう心にくゝいうなるにも。故宮のおはします世ならましかば。かやうにのぼらせ給はましなど人々いひいづる。げにいとあはれなりかし。
天のとを雲ゐなからもよそにみて昔の跡をこふる月哉
冬になりて。月なく。雪もふらずながら。月のひかりに空さすがにくまなくさえわたりたる夜のかぎり。殿の御かたにさぶらふ人々とも