Page:Gunshoruiju18.djvu/381

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すぐさするを。今の世の人はさのみこそはいでたて。さてもをのづからよきためしもあり。さてもこゝろみよといふ人々有て。しぶにいだしたてらる。まづ一夜まいる。きくのこくうすき八ばかりに。こきかいねりをうへにきたり。さこそものがたりにのみこゝろをいれて。それを見るよりほかにゆきかよふるいしぞくなどだにことになく。こだいのおやどものかげばかりにて。月をも花をもみるよりほかの事はなきならひに。たちいづるほどの心地。あれ[かイ]にもあらずうつゝともおほえで。あかつきにはまかでぬ。さとびたる心地には。中々[さイ]たまりたらむ。さとずみよりはおかしきことも見きゝて。心もなぐさみやせんと思ふおりありしを。いとはしたなくかなしかるべきことにこそあべかめれと思へどいかゞせむ。しはすになりてまたまいる。つぼねして。このたびは日ごろさぶらふ。うへには時々よるものぼりて。しらぬ人の中にうちふしてつゆまどろまれず。はづかしうもののつゝましきまゝに。しのびてうちなかれつゝ。あかつき[にイ]は夜ふかくおりて。ひくらし[てゝイ]このおいおとろへて。われをことしイもたのもしからむかげのやうに思ひたのみむかひゐたるに戀しくおぼつかなくのみおぼゆ。[以下一本三六九頁上段一五行ニツヾク](底本三七一頁下段八行)くちおし。いかによし[以下一本三七三頁下段一五行ヨリツヾク]なかりける心なりと思し見はてゝ。まめしくすぐすとならば。さてもありはてず。まいりそめし所にも。かくかきこもりぬるを。まことともおぼしめしたらぬさまに人々もつげ。たえずめしなどする中にも。わざとめして。わかいひとまいらせよと仰らる[くだイ]れば。えさらずいだしたつるにひかされて。又ときいでたてど。過にし方のやうなるあいなだのみの心をごりをだにすべきやうもな