Page:Gunshoruiju18.djvu/380

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ば。別當とおぼしき人いで來て。そこはさきの生に。此みてらの僧にてなんありし。佛師にてほとけをいとおほく作り奉しくどくによりてありしすざうまさりて人と生れたるなり。このみだうの東におはする丈六の佛はそこのつくりたりし也。はくををしさしてなくなりにしぞと。あないみじ。さばあれにはくをしたてまつらむといへば。なくなりにしかば。こと人はくをし奉りて。こと人くやうもしてしとみてのち淸水にねんごろに參りつかうまつらましかば。さきの世にそのみてらに佛ねんじ申けんちからに。[以下一本三七三頁上段一行ニツヾク](底本三七〇頁上段一二行)[以下一本三七八頁下段三行ヨリツヾク]。われはかくてとぢこもりぬベきぞと。のこりなげに世をおもひいふめるに。心ぼそ[さイ]たへず。東は野のはるとあるに。ひんがしの山ぎはは。ひゑの山よりしていなりなどいふ山まであらはに見えわたり。西はならびの岡の松風いとみゝちかう心ぼそく聞えて。內にはいたゞのもとまで。田といふもののひだひきならす音など。井中のこゝちしていとおかしきに。月のあかき夜などは。いとおもしろきをながめあかしくらすに。しりたりし人さと遠く成ておともせず。便につけて何事かあらんとつたふる人におどろきて。

 おもひ出て人社とはね山里の笆の荻に秋風そ吹

といひてやる。十月に成て京にうつろふ。母あまになりて。おなじ家の內なれど。かたことにすみはなれてあり。てゝはたゞ。われをおとなにしすへて。我は世にもいでまじらはず。かげにかくれたらんやうにてゐたるを見るも。たのもしげなく心ぼそくおぼゆるに。きこしめす祐子內親王 當今第三皇女 後中宮嫄子崩後也 御坐于關白殿號一宮に心ぼそくてあらんよりはとめすを。こだいのおやは。宮づかへ[人イ]はいとうき事也とおもひて